2010年03月13日

スヴェンボーのライフスタイルと都市環境デザイン

CIMG4163-thumbnail2.jpg本レポートは、都市環境デザイン会議の会報誌2009年11月20日号「ライフスタイルと都市環境デザイン」特集号のご依頼により寄稿した原稿です。
なかなか時間がなくて、アップできませんでしたが、今後の都市形成などで、何か参考になれば幸いです。

 
■スヴェンボーのライフスタイルと都市環境デザイン 
 
2006年、世界幸福度ランキングで世界一なったデンマーク。そのデンマークで、高福祉都市として、ベスト・オブ・ザ・シティを受賞。近年、首都コペンハーゲンから、大量の移住者を集めている都市があると知り、2007年6月デンマークに向かった。
 

聞けば、その都市は、その年の1月、デンマークが断行した「地方自治制度」の大改革の中で、新たな公共のリーダーシップ、自治体におけるバリュー経営を実現し、高い評価を得ているという。

首都コペンハーゲンから160q、南フュン島の南部、アーキペラゴ(群島)の都と称される美しい港町。スヴェンボーは人口わずか58,000人の地方都市だ。デンマークに98ある自治体の中でも、決して大きな都市ではない。そこで、最先端の社会福祉、まちづくりが実現されているという。スヴェンボー市の協力を得て、その取り組みを取材させてもらった。


デンマークは、EUが掲げるビジョン「世界で最も競争力があり、最もダイナミックな知識集約型の経済を持つ地域が、より多くの雇用と強固な社会的結束を持ち、持持続可能な経済成長」の実現において、2006年、EU25カ国中、第一位に輝いた。「北欧スタイル」というと、ゆったりしたスローライフのイメージがあるが、それが実現できるのも、高い生産性と競争力があってこそ、デンマークはそれを国家的に実践し、成果を挙げていた。

 

■北欧社会の価値観とバリュー
スヴェンボー市は、2007年1月、周辺の2つの都市と合併し、新市スヴェンボーになった。合併にあたり、規模、文化・歴史が異なる三つの都市は、合意形成を行った。それが新たな「公共のリーダーシップ」であり、新市経営の基礎となる共通のバリューだった。掲げたのは「ホリスティックな問題解決」そして「市民志向の自治体」、その質を高めるための「学習と開発」、「幸福と健康」の4つだ。


新市の経営は、このバリューを基礎として、思考され、行動、検証される。デンマークでは、ユーザー・デモクラシー(利用者民主主義)が浸透しており、まちづくりなどの政策形成には、市民パネルが活用される。
また、北欧社会の価値観、共通認識として、ノーマライゼーション(様々な違いを受け入れる社会こそが正常である、という多様性の許容)や、高齢者三原則として、@環境の継続性、A自己資源の活用、B自己決定権の考え方がある。

 

■北欧デンマークのライフスタイル
 スヴェンボーの取材をサポートしてくれた市の担当者、マーチン・フィッシャーは、滞在中、彼と彼の両親の家それぞれにホームスティさせてくれた。彼の父はすでにリタイアしており、海を目の前にした広い庭を有す邸宅で、夫婦二人で暮らしていた。


マーチンは、夕方5時に、市役所を出ると、保育園に二人の子どもを迎えに行き、戻ると家の前の海で、子どもたちを水浴びさせた。彼の父は、客のためにバーベキューを用意してくれ、母はキッチンから、様々な果樹が植えられた芝生の庭を下り、サラダやパンやジュースをのせたお盆を抱えてやってくる。まるで、映画のワンシーンのようだ。


わいわいやっていると、隣の住人が、手紙を持って、庭越しに顔をのぞかせる。近く予定されている夏至祭りのお知らせらしい。食卓の前には、美しい海があり、遠くを行き交う大小の船が見える。聞こえてくるのは、岸に寄せる小さな波の音だけ。でも、だからといって、これがスヴェンボーの特別裕福な人の暮らしというわけではないようだ。


というのも、マーチン自身の家に泊めてもらった時、最近購入したばかりの中古の家は、合間を見て自分たちで少しずつリフォームしているというものだったが、十分な広さと設備を有していた。もちろん、庭つきで、バトミントンくらいなら、親子で楽しめる広さがある。その上、家の裏には、家庭菜園などもできる裏庭があった。

 
彼自身は、日本に留学していたこともあり、デンマークに戻り、スヴェンボー市に現在の国際業務のプレゼンをし、自らのポジションを得たばかり。夫婦は共働きだが、保育園に通う子どもも二人いる。それでも、若い夫婦が、自分たちの家を手に入れることができる。それがスヴェンボーの暮らしだ。


また、スヴェンボーから船で1時間、再生可能なエネルギーアイランド「エーロ島」では、屋根も抜け落ちたお化け屋敷を数年かけて夫婦や友人でリフォームしたという家を見せてもらった。こうしたリフォームは、デンマークでは一般的なようだ。

 

■ワークブレスとワークスタイル
 スヴェンボー訪問初日、私が最も驚いたことは、夕方5時に、市庁舎から一斉に人の姿が消えたことだった。市の社会福祉の担当者のインタビューが、10分ほど時間オーバーし、部屋を出ようとした私は、一瞬、目を疑った。オフィスはすでに消灯され、人っ子一人いない。また、入口は施錠され、外に出られない状態になっていた。なんたる早技。


それでいて、2005年、国民一人当たりのGDPは、デンマークの世界第6位に対し、日本は15位。はるかに低い数字だ。彼らは、どうやって、この高い生産性を実現しているのか。働き方については、ヨーロッパのベストワークプレイス100にも選ばれた「Kjaer(ケア)」という民間企業でも、その先進的なワークプレイスとワークスタイルをを見せてもらった。

ワークプレイスでは、北欧ならではの開放的な空間デザイン、人間工学にもとづいた機能的な設備が目につく。可動式の机は、立って仕事することにも対応している。


また、優秀な人材を確保するためワークライフバランス(仕事と私生活の調和、やりがいのある仕事と充実した私生活の両立)の取り組みに関しては、非常に手厚い支援を行っていた。そこで働く社員の満足度には、非常に高いものが見られた。彼らにとって、家族や自分の時間は、人生の充実度、満足度にとって、とても重要であり、優秀な人材であれば、あるほど、それを実現できる場所へ移動する。


また、彼らは、短い時間で、最大の成果を生むことに、とても積極的だ。たとえば、障害者福祉の現場では、障害者であっても、個々が有している能力を発揮させ、活躍の場を与える支援に重点を置いている。そのため、スタッフは、障害者の自主性を重視し、彼らのチャレンジを成功させるため、互いの知識やノウハウを提供しあい、協力し合う。

ネットワークを効果的に使い、協力して仕事をすることで、生産性や競争力を高め、最終的には、互いに大きな利益を得る。その合理性と戦略性には学ぶところが大きい。
 

■大量移住を呼び込んだ理由
 スヴェンボーへの首都コペンハーゲンからの大量移住は、デンマーク国内でも大きな話題となっていた。2005年、コペンハーゲン・ビジネススクールは「デンマークにおけるクリエイティブ・クラスの分布と分析」という調査報告を発表。

 
その中で、創造的な仕事に携わる人口が多い都市として、首都コペンハーゲンと第二の都市オーフス市のほかに、地方都市の中からスヴェンボー市の名を挙げ、同市は一躍注目を集めることになった。その注目度は、デンマークの全国紙で特集が組まれるほどで、私はその記事を書いたジャーナリストにも取材し、話を聞いた。


何故、彼らはスヴェンボーを選んだのか。一つに地理的要因が挙げられた。首都コペンハーゲンがあるシェラン島と南フュン島の間に橋が出来て、二時間ちょっとで行き来ができるようになり、日帰りが可能になった。第二にインターネットの普及がある。

 
クリエイティブ・クラスと呼ばれる人たちは、主に三種類。建築家やコンサルタントのような専門家、アーティストなどのクリエイター、そして、社会変革者たる起業家たち。彼らのような仕事に携わる人たちは、必ずしも、オフィスに縛られて仕事をする必要がない。また、第三の理由として挙げられたのが、ワークライフバランスだった。


実際にスヴェンボーに移住した人たちのネットワーク、GE9のリーダーに話を聞いた。GE9はすでに60人の移住者ネットワークとなっており、スヴェンボー市の経済や産業政策にも影響を与え始めていた。テレビプロデューサーとジャーナリストの二人の女性は、それぞれ赤ちゃんを抱いて、オフィスに現れた。


彼女たちは、こう話した。「必要な時に、コペンハーゲンに行き、それ以外は、豊かな自然、充実した福祉や保育サービスの中で、家族や自分のための時間を大切にする生活をしたい」そんな暮らしを求めた時、スヴェンボーはとても魅力的だったという。


また、もう一つの理由として、GE9の存在そのものが挙げられる。最初に、スヴェンボーに移住したテレビプロデューサーの女性が、情報発信力を持っていて、次々と、移住者を呼び寄せた。全国紙で取り上げられてからは、加速度的に移住者は増えているというが、クリエイティブたちにとって、知的刺激というものはとても重要だ。

 
クリエイティブな人たちが集まっている地域では、都市にいるのと同じような知的刺激を得ることが可能だからだ。そういう人たちが集まっているまちの付加価値は決して小さくない。
 

■三原則に基づいた「介護付き高齢者住宅」
 
スヴェンボー市の高齢者福祉は、高齢者福祉の三原則が貫かれている。自己決定権に基づき、高齢者が自宅で過ごすという継続性を願えば、そこで出来る限り、その人の持つ機能を生かした福祉が提供される。スヴェンボーはセントラルキッチンが充実しており、食事の配達サービスも、その介護度に応じたメニューが用意されている。流動食しか受け付けない人には、専用の食事もあった。


私もごちそうになったが、このセントラルキッチンの食事は、レストラン並みにおいしかった。食事は空腹を満たすためのみにあるのではない。食事という楽しみも、生きる楽しみの一つだし、そこに人としての尊厳、幸福を重視した福祉の一端が見えた。


介護付きの住宅は、一人ひとりのニーズに合わせ、様々なタイプがある。写真は、見学させて頂いた「ブリュグフーセット」という介護付き高齢者住宅だが、建物も敷地も、広々した空間が広がる。通路は車椅子がすれ違えるくらいの広さがあり、介護施設というより、リゾートホテルのようだった。

 
外側の手すりには、数メートルおきに花のプランターが置かれ、デンマークのフラッグカラーの赤色の花と葉の緑が通路を彩っていた。各部屋のドアには、ガラスがはめられている。
カーテンを開けば、外を見ることもできるし、誰かが通りかかれば、声をかけることもできる。人に会いたくなければ、カーテンを閉めておけばいい。窓も大きくとられ、ドアを開かないまま、窓越しに会話することもできる。


室内は、もちろんバリアフリーだ。バストイレへの移動も一人で容易にできる。何かあれば、24時間体制で、スタッフが駆けつけてくれるし、希望すれば、隣接する施設でデイケアサービスを利用することもできる。施設には、スポーツジム並みの健康器具が整備され、体力づくりをすることもできる。


印象的だったのは、高齢者施設に限らず、障害者が働くカフェなども含めて、福祉施設の色づかいがとてもビビットで明るかったことだ。この色がもたらす心理的効果も見逃せない。それだけで、とても心も明るくなり、優しい気持ちになる気がした。

 

■森の保育園 
北欧における自然享受権という考え方は、たとえ、私有地であっても、一定範囲で自然を享受する権利が誰にでも認められるというものだ。たとえば、他人の敷地に立ち入り、そこに咲く花や果実を摘んで楽しんだり、寝転がったりすることも許されるという。


森の保育園は、他の北欧諸国にも多くみられるものだが、ここでは、子どもたちは野外で遊ぶ。通常、森の保育園では、雨や雪の日でも、乳母車に入れられた生後間もない赤ちゃんまでが、野外に置かれると聞いていたが、実際に見た時は、やはり、驚いた。


子供たちは、園内や近くの森や海などにも出かけ、自然と遊び、自然に学び、自然への愛着を持ち、自然のルールを身につけて育つ。スヴェンボーの幼児教育の理念は、「子どもが、一人の人間として自分らしくあるための強さを養う」ことにある。ゆえに、保育の内容も、子供たち自身が決める。


自然と触れ合うことで、子どもの身体の発育や主体性を育むため、こうした自然教育法を取り入れている。こうしたことは、その後の教育システムにも受け継がれている。前出のコペンハーゲン・ビジネススクールのリポートでも、スヴェンボー市の教育・知識に関する社会環境が国内でも優れていることが示されている。

 

■スローなまちの新たな開発計画
 もともとスヴェンボーは、造船業が盛んな重工業のまちとして発展してきた。それがグローバル経済の中で衰退し、転換を迫られた。新たにスヴェンボーが打ち出したのが、観光や外からの投資を呼び込む新たなまちの開発計画だ。


まず、観光に関しては、イタリア発祥のスローシティ認証「チッタ・スロー」で、デンマーク国内で初めて認定を受けた。チッタ・スローは、地方中小都市の生活・文化・歴史を再評価し、スローな生活と環境を尊重して、人間らしく誇りを持って田舎で生活して行なうという運動だ。イタリアに留まらず、ヨーロッパを中心に、世界の約100都市が加盟している。


また、クリエイティブたちの大量移住に関していえば、市は、現在の市街地の西側にある「思慮深い森」といわれる自然豊かな地域を新たにクリエイティブたちのまちとして開発する計画を打ち出している。新たなまちは、美しい自然と共生し、環境にも配慮された住宅、サイクリングロードや教育・福祉施設、アミューズメントなどのコミュニティゾーン、ビジネスゾーンなどの機能を配したまちとなる予定だ。今後25年の間に、新たな住民7,000人を呼び込む計画となっている。


また、元造船所の跡地活用についても現在、開発計画が検討されており、ここに新たな投資を呼び込みたいとしている。同市は、日本市場における同市が有する福祉ソフトの提供や観光誘致などのため、毎年一回、担当者を日本に送りこんでいる。

 
人口わずか5万の地方都市がグローバル戦略を持っていることは、海外では当たり前のことなのだろうか。マーチン・フィッシャーは、日本の漫画家などとの文化交流にも可能性を感じているという。来年に向けては、同市が持つ福祉や教育のソフトと日本の漫画・アニメのコラボレーションの話も出ており、新たなビジネスへの発展も感じさせる。
 
posted by 持続可能な未来プロジェクト at 10:13| 水津陽子リポート

2009年12月31日

持続可能な未来プロジェクト

svendborg.jpg本サイトは、2007デンマークの先進自治体スヴェンボー市の視察からはじまった同市と日本との交流に関する情報を提供するものです。お問合せは、情報提供をしている各メンバー宛にお願いします。

次項有健康福祉ビジネス支援 有限会社キュベル 風間英美子 リポート
次項有地域再生コンサルタント 合同会社フォーティR&C 水津陽子 りポート
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2009年09月04日

マーチン・フィッシャー来日(1)バリュー経営セミナーin横浜市

DSCF0502.JPG現在、デンマークの先進自治体「スヴェンボー市」のマーチン・フィッシャーが、南デンマーク大学のフランダーセン氏などを同行して来日しています。滞在期間中、日本国内、関西や東京、神奈川などで、地方自治体や企業、医療・教育関係者等との交流を行っています。その中で、今回、横浜市のしごと改革推進室や共創推進事業本部の職員の方に向けて、スヴェンボー市が行っているバリュー経営に関するセミナーが行われました。

まず、2007年同市を視察し、同市の取り組みを取材した私、水津から、同市のバリュー経営の概要をご紹介し、マーチンなど同行したお二人のゲストなども参加頂き、職員の方から、同市の取り組みに関して、様々な質問を受けました。(ICレコーダー電源切れで記録できず・・・)

DSCF0519.JPG今回は、主に、しごと改革推進室の職員の方が参加されたこともあり、質問は、同市が2007年デンマークの大規模な地方自治改革において「道州制」ともいえる地方制度の抜本改革がなされ、その中で同市が実践したバリュー経営と、そこへ至る合意形成、リーダーの360度評価などに多くの質問が飛びました。

もちろん、制度的に、日本とデンマークでは異なる点も多いのですが、同じような制度導入をしても、日本ではなかなかうまくいかない。その理由を探るような質問が多かったでしょうか。私はあえて、口をはさまず、マーチンへの質問の機会を大きくとっていましたが、システムの導入にあたって、それをどう運用、活用しパフォーマンスできるかの根底に、完成された「合意形成のプロセス」の有無、「議論」することへの意識の違いなどがあることが見えました。 

それは、国民性やメンタルブロックという問題にすり替えされがちですが、私は主因は教育にあると感じています。それは、OECDの教育の国際比較PISAにおいても、日本人が苦手とする部分の指摘がありますが、議論や合意形成、対話における部分の弱さは、そうした教育訓練、経験の不足にあると思います。
リポート・本文に対するお問い合わせ:合同会社フォーティR&C 水津陽子 

posted by 持続可能な未来プロジェクト at 09:08| 水津陽子リポート

マーチン・フィッシャー来日(2)漫画家との交流

DSCF0524-2.jpg2009年9月2日横浜市のセミナーの後、デンマーク・スヴェンボーと交流のある漫画家の西野公平さん、つぐくみさんと一年ぶりにお会いしました。昨年、マーチンが来日した際、西野夫妻を含め、漫画家学会のすねやかずみさんなどで、交流の機会を持ちましたが、それ以来でしたが、西野さんからは、今後、日本とデンマーク・スヴェンボーとの漫画文化での国際交流事業の提案などもあり、実現すれば、来年春にも、デンマークに行くことになるかもしれません。
昨年、マーチンが来日した際、私も西野さんやすねやさんを紹介されて、それを機に、漫画学会などの漫画アニメなどのエンタテインメントの取材もさせて頂きました。

本リポート:地域エンタテインメント戦略(合同会社フォーティR&C 水津陽子)
TV動画リポート:漫画アニメの仕事の現場(NPO法人LWAC 市民メディア番組)

今回の事業プランが実現すれば、三年ぶりにスヴェンボーを訪問し、新たなスヴェンボーの情報もご紹介できるのではないかと思います。また、実現するようでしたら、お知らせします。
リポート・本文に関するお問い合わせ:合同会社フォーティR&C 水津陽子

posted by 持続可能な未来プロジェクト at 08:24| 水津陽子リポート

2008年10月10日

日本・デンマーク意見交換交流会2008

DSCF0798.JPG昨年来、先進的地域経営のモデルとして、情報をお届けしていますスヴェンボー市から、この度、同市の国際業務視察担当のマーチン・フィッシャーが来日し、昨日、東京ウィメンズプラザで、日本デンマーク意見交換交流会を開催しました。 
北欧デンマークの先進的取り組みに興味を持って頂いた日本の地方自治体、企業の皆様が参加頂き、マーチンから最新の地域活性化プロジェクトについて紹介頂いた後、参加者の方からのご質問を頂きながら、活発な意見交換がされました。
 
DSCF0794.JPGクリエイティブ・クラスを呼び込む 新たなまちの開発計画 "Tankefuld",new city plan
デンマーク語で、"Tankefuld"(タンケフル,full of thought.思慮深い)という名前がついた自然豊かなエリアに、スヴェンボー市は、今後20数年をかけて、約2500世帯の新たなクリエイティブを呼び込む、新たなまちの開発計画を進めています。


まちのコンセプトは、“Thoughtfullness”(配慮、思いやり)。 
昨年のスヴェンボー視察報告会等でも、ご紹介してきましたが、人口5万8千人の地方都市スヴェンボーに今、首都コペンハーゲン等の大都市から、60人を超えるクリエイティブ・クラス(リチャード・フロリダが提唱した、創造的な仕事に携わり、経済的な価値を生み出す人々)が移住。ネットワークを形成し、スヴェンボーのまちづくりやブランディングにとって大きな力となっています。 
どうして、この小さな地方都市にクリエイティブたちが集まってくるのか。その理由にスヴェンボー市は気づき、こうしたクリエイティブたちが求める価値観、ライフスタイルに応えるまちの開発計画を打ち出しました。
マーチン・フィッシャーは、クリエイティブたちをひきつける “Thoughtfullness”なニューシティの計画について、説明しました。
 
DSCF0795.JPG参加者からは、このまちのコンセプトやビジョン、具体的な計画の進め方についての質問がありました。開発計画は、市民および当該エリアに居住する人たちの参加により進められ、美しい自然と共生し、環境にも配慮された住宅、サイクリングロードや教育・福祉施設、アミューズメントなどのコミュニティゾーン、ビジネスゾーンなどに様々なアイデアが出されています。
また、そもそも、どうして、スヴェンボーにクリエイティブが集まるのかというご質問も改めて頂きました。すでに過去のリポートで書かせて頂いたので、詳しくは割愛しますが、首都から二時間半の地理的要因と情報技術の進展、美しく豊な自然環境、充実した福祉サービスに加え、何より、クリエイティブが集結することによって、情報ネットワーク、知的好奇心を満たすことができます。 
今後、ここに一大クリエイティブ・シティが形成されていく中で、同市がどういったビジョンを描いているのかというご質問もありましたが、コンセプトが示すように、スヴェンボーは、クリエイティブたちが快適に暮らし、創造を働かせ、新たな価値を生み出せる環境、「配慮、思いやり」のまちを創ること、それをサポートすることを目指しています。
 
DSCF0806.JPG今年4月、ホーネマン市長が来日した際、デンマーク大使館のスヴェンボーセミナーで語った「我々はここに、人が環境と調和して生き、働ける最高の場を創っていくことに専念します。新しいまちは、持続可能なライフスタイルを追及し、新たなビジネスを生み出す会社を引き付ける場になるよう努力します」という言葉にも表れています。 
今回は、参加者の皆さんとの活発な意見交換ができ、その後の交流もとても盛り上がり、大変有意義な回でした。書ききれないトピックもありますが、今回の来日で、新たな日本との連携交流の可能性も出てきました。

今後とも、こうしたプロジェクトの進展、スヴェンボーからの情報をお届けしていきたいと思います。また、スヴェンボーに興味を持って頂けるみなさんとのネットワークも広げていければと思っています。
この日のリポートは近日まとめてお届けしたいと思います。リポート、または、スヴェンボー市へのコンタクトをご希望される方は、こちらまでご連絡ください。合同会社フォーティR&C http://www.forty-jp.com/

posted by 持続可能な未来プロジェクト at 19:26| 水津陽子リポート

2008年04月09日

スヴェンボーに学べ、自治体のグローバル戦略(2)

Dscf0510_4 2008年4月3日、デンマーク大使館で、開かれた「スヴェンボーセミナー2008」。

日本との関係強化と新たな交流に向けて、この日のため来日した、デンマーク・スヴェンボー市のL.E.ホーネマン市長は、自らプレゼンテーションに立ちました。
そこで、魅力的な地域資源と彼らの生き方、価値観、ロボット産業や観光、新たな二つの開発計画等が紹介されました。 その中身とは・・・。
  
日本とスヴェンボー
 
スヴェンボーと日本との歴史的な関係は、1931年。オレロップ体操学校と日本の学校との交流にはじまりました。この交流は、今も発展的に続いており、昨年も日本の大学から100名を超える学生がオレロップを訪れています。
デンマークは小さな国です。面積でいえば九州と同じくらいですが、人口は九州の半分以下、550万人の小さな国です。そのデンマークの中でも、スヴェンボー市は人口5万8千人。決して大きな町ではありません。
しかし、海洋・造船の分野では、デンマーク最大の企業「マースク」を生み出した町であり、10年前までは、造船の街でした。しかし、10年前、その造船業がグローバル経済の中、駄目になり、スヴェンボーは、知識経済社会へ対応した新たな産業創出への向け、大きく舵を切りました。
この日は、スヴェンボーの海洋大学の校長先生も同行されていました。スヴェンボーで船を造ることはなくなりましたが、こうした海洋の知的地域資源の活用は、今後、大きな強みとなっていくでしょう。実際、マースクの社員など海洋に関するデンマークの教育は、ここが一手に担っています。
日本の企業では、日本水産などとの知識の交換、共有は、彼らに大きな刺激と学びを与えたと市長は言っていましたが、今後、スヴェンボー市は、新たな二つの開発計画において、外からの投資、人材、観光やビジネスの消費を呼び込もうとしています。   
 
新たな開発計画で、外からの投資、人材、消費を呼び込む
Dscf0514 最近、日本の新聞に、南デンマーク大学が開発した「積み木型ロボット」 の話題が載っていましたが、デンマークが位置する「南フュン島」では、地域での協力、知識の交換や共有が進んでいます。
スヴェンボー市では、昨年もご紹介したように、今、首都コペンハーゲンから、大量に現役の知識経済層(クリエイティブ・クラス)が移住してきていますが、そういう人材や投資を、今後、この地域に呼び込むため、新たな開発計画を持っています。 
 
ポスト造船、「造船所の島」の未来計画
開発計画の一つは、10年前まで造船所があった島の再開発計画です。この計画は、まだ、本当にこれから具体的な計画づくりにとりかかるところではありますが、市長は、その可能性について語りました。
「ここには、いろいろな可能性があります。新しいエンタテイメント、オフィスビル、ITのオフィスビル、ひょっとしたらホテルを創るかもしれません。しかし、何ができるかは別にして、ここにクリエイティブなものが出てくるのは間違いありません。日本のパートナーのお客様もたのしめるようなものを創りたいと思っています」
 
人と自然が調和する、未来の知識を持った新しいまちの開発
第二の開発計画について、ホーネマン市長は、人間と自然との最も素晴らしい調和。新しい村の中には、現代、将来の最もふさわしいライフスタイルの住宅、(および、そういったライフスタイルを実現できるまちの様々な開発を含む)を創ろうと考えています。未来の知識を持った新しい村を創ります、と表現しました。
今回、10月の来日に際しては、主にこの開発計画の内容、スヴェンボーの戦略、今後の展望をご紹介しました。
リポート 合同会社フォーティR&C 水津陽子
posted by 持続可能な未来プロジェクト at 18:44| 水津陽子リポート

スヴェンボーに学べ、自治体のグローバル戦略(1)

先日、デンマークの先進的なコミューン(地方自治体)スヴェンボーから国際業務視察担当のM.フィッシャー氏が来日し、日本デンマーク意見交換交流会を開催させて頂きましたが、今年、マーチンが来日するのは二度目です。今年春、2008年4月9日(水)、デンマーク大使館で、「デンマーク・スヴェンボーセミナー&ランチ・ビュッフェ・ネットワーキング2008」が開催されました。

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スヴェンボーについては、昨年、日経グローカル「グローバル・リポート」などを通じて、その先進的地域経営「バリューベース」や「リーダーの360度評価」などをご紹介しました。人口わずか5万8千人の小さな自治体が、日本の大企業でもできない、付加価値型の経営をやっている。そのレベルの高さに驚き、昨年、スヴェンボーを訪問しました。

 
 
Dscf0504
そのスヴェンボーが2008年、ついに次の一手、「グローバル戦略」を打ち出してきました。この日のために来日したスヴェンボー市のL.E.ホーネマン市長は、自らプレゼンテーションに立ち、「私たちが生き残るには、互いに協力し、知識交換、共有することが大切です。また、国内だけでなく、海外との関係も重要だと思っていまして、その中でも、日本は一番大切な国だと思っています」と述べられました。 

 
Dscf0508 市長からは、スヴェンボーが有している優れた地域資源、産業、予定している新たな二つの開発計画の紹介がありました。 

スヴェンボー市からは、ホーネマン市長をはじめ、行政担当者(観光・業務視察等)のほか、民間の会社、学校などからも担当者が同行。その意気込みが伺えました。日本側は、スヴェンボー市にゆかりのある日本の企業、学校、病院、行政担当者等が参加。 

Dscf0528 在日本デンマーク大使は、冒頭のあいさつで、「これまでのつながりをより深く強いものにしていくことが必要です」と呼びかけました。

ホーネマン市長は、この会を「日本-スヴェンボー・ネットワーク」の核、プラットホームとして、日本との新たな関係づくりを進めていきたい。今後は、このネットワークを足がかりに、日本とスヴェンボーの人や文化、産業の交流、経済を生みだしていこうとしています。 
 

Dscf0523 人口5万の小さな地方都市が、こうしてグローバル戦略に、市長が地元企業などをひきつれてやって出てきました。 
 
写真は、左がデンマーク大使館リンドバーグ参事官、右がスヴェンボー市のL.E.ホーネマン市長。


リポート 合同会社フォーティR&C 水津陽子

posted by 持続可能な未来プロジェクト at 18:41| 水津陽子リポート

2007年12月11日

日経グローカル・グローバルリポート

glc200.jpeg昨年11月、日経グローカル( 2007.11.19 NO.88)「グローバル・リポート」に執筆させて頂きました『市の権限強化で何が変わったのか 道州制導入のデンマークに見る」の記事を再編し、ご紹介します。
文責:地域再生コンサルタント 水津陽子
 
 
●デンマークで道州制%ア入 市の権限強化で何が変わったか?
2007年1月、デンマークは地方自治制度を転換した。県を廃して、道州のような新たな広域圏へ再編するとともに、基礎自治体の数を3分の1近くに削減する大がかりな「地方自治の構造改革」を断行した。そのデンマークで、注目を集めているのが、人口5万8千人の地方都市でありながら、新たな自治体経営の手法を取り入れ、地域経営や産業振興で成果を上げているスヴェンボー市だ。
   

参考資料
「デンマークの地方自治構造改革」「地方政治構造改革その要約-デンマーク内務保健省」(財団法人自治体国際化協会編訳)、「HYGGE vol.8 共生社会を目指すスカンジナビア」(スカンジナビア政府観光局)

 
● 強く、持続可能な「基礎的自治体」の人口は3万以上
denmark_suizu1.jpgデンマークの地方自治の構造改革は、2001年の総選挙で誕生した、自由党・保守党連立のラスムセン政権の下で進められ、2007年1月1日、ついに新制度に移行した。塗り替わったデンマークの地図は、14のアムト(県)を廃し、5つのリージョン(新広域圏)へ再編統合するとともに、改革前271あったコミューン(基礎的自治体=市に相当)を98に削減するという大胆なものだった。
 
改革の目的は、様々な課題を、市民により近いところで効率的に解決する「より強く、持続可能な自治体」の創造にある。改革の背景には、先進国共通の課題である「人口の高齢化」「グローバル化」「知識経済社会」がある。「高福祉」で知られるデンマークだが、今後、高齢者人口が増えれば、社会保障費の増大は避けられない。とはいえ、今以上の「高負担」を国民に求めることも現実的ではない。
 
国際的にみれば、デンマークは、政治、財政の両方で、地方分権が進んでいる。しかし、1970年代の地方政治改革からすでに30年が経ち、現状の地方自治構造では、これからデンマーク社会が直面する課題に対応していくことは難しい。ラスムセン首相は、2002年に行政改革構造委員会を設置した。
 
委員会は、将来の負担に耐えられる自治体の規模と、国、県、市の権限と役割がどうあるべきかを検討。2004年に発表した「地方自治構造改革」の報告書では、あるべき公共のモデルと改革を成功させるための提案をした。その中で、市により多くの権限を移管するため、合併により誕生する市の規模(維持能力)は人口3万人以上とした。これに基づいて改革を行った結果、人口2万人以下の自治体は7つになり、自治体の平均人口は改革前の2万人以下から5万5千人に増加した。
 
●バリューベースの市政〜公務員に360度評価を導入
改革は、より強力で、持続可能な自治体をつくるため、市の合併を進めるが、市の数が減る一方、新しい市は、権限の委譲と同時に、より多くの課題と責任を負うことになる。国の管理下で細かく指示されることはなくなるが、反面、自ら計画と目標を作り、それを達成する能力も求められる。その中で、新市のリーダーシップをどうとっていくのかは、新らたな基礎的自治体共通の課題である。


スヴェンボー市は、新市への統合へ向けて、幾つかの政策を戦略的に進めてきた。 合併前のスヴェンボー市の人口は4万3千人。合併するのは、規模の小さい近隣の二つの自治体だった。それぞれに異なる地域のニーズや文化を持っている。異なる組織、運営、組織文化もある。市町村合併の課題は、大きく二つ。

・衝突をいかに回避し、新市へ統合するのか
・合併による利益を個々の地域が得るための「一体感」をどう創造するのか

 
その合意形成のプロセスと、共通の利益を見出すためバリューは興味深いものだった。また、そのバリュー実現のため、最重要課題に掲げられたのが「新しいスタイルのリーダーシップ」への取り組みだ。スヴェンボー市の人口の約一割が公務員。その組織と職員がより良い成果を上げるため、 スヴェンボー市は「リーダーの360度の評価制度」を導入した。
 
ただ、評価はあくまで、「職員が各自の作業が影響を及ぼし合うことを認識し、協力しあい、仕事を達成する」ためのもので、日本の成果主義のように、点数をつけて序列、同僚と競い争い疲弊させるような評価ではない。あくまで、組織自体が高い生産性と競争力を実現するたの戦略と合理性に立脚したものだ。 


●首都からのクリエイティブ・クラスの大量移住のワケ

今回、スヴェンボーに行きたいと思った理由の一つは、スヴェンボーに起きている、クリエイティブ・クラスと呼ばれる、創造的な仕事に携わり、経済を成長させる価値を生み出す、経済的にも、精神的にも豊かな人たちの、首都コペンハーゲンからの大量移住だった。しかも、彼らは団塊シニアとかではなく、20代から40代の現役、子育て世代。その数は、すでに60人を超えている。 

 
たとえば、日本の人口5万の地方都市に、東京で活躍する現役のキャリアが60人集中して移住するなど、まずあり得ない。何故、彼らはスヴェンボーに移り住むことにしたのか。私は、スヴェンボー在住のクリエイティブ・クラスのネットワーク「GE9」のメンバーに話を聞いた。 

 
彼らがスヴェンボーを選んだ理由の一つ、それが、ワーク・ライフ・バランス(仕事との家庭生活の調和)であり、自然豊かな中で、家族と過ごす時間を持ち、人間らしい生き方をすることだった。
知識経済社会の中で、経済を成長させる価値を生み出す人材は、経済的豊かさだけでなく、精神的な豊かさも重視する。条件が整えば、より自分にとって良い環境に移り住むことは、今後も充分あり得ることなのだ。 こうした成功は、今後、日本の同じ規模の自治体にとっても、参考にすべきモデルの一つとなるだろう。


●求められる地方の再生につながる地方分権

デンマークにおける「地方自治構造改革−より強い、持続可能な自治体の創造」への戦略とプロセスを改めて追っていくと、その強さの根底には、国や地域の在り方について、市民が参加して意思決定を行い、国のあり方を決めていく「参加型民主主義」があることに気づく。
 
国が地域のあり方を規定するのではなく、国民と地域の声が国のあり方を変えていくという発想は、日本の道州制やふるさと納税などの議論には全く見当たらない。 地方の自立と持続可能性を実現することは、国の持続可能性を左右する。
 
地方分権は、権限(政治的権限と財源)の委譲と、それに伴う責任セットになっている。しかし、国はきないから地方にやらせないのではなく、地方を自立させる戦略を持ち、必要な移行期間と資金、ノウハウの提供を政策として行っていくべきだ。最も必要なのは制度ではなく、この国の将来の明確なビジョンとそれを実現する戦略とプロセスだろう。

 
EU各国は2000年以降、「今後10年で、世界でもっとも競争力があり、もっとダイナミックな知識集約型の経済をもつ地域になること」を目標に、生産性と競争力を高める政策を推進。デンマークも地方行政構造改革をはじめ、様々な改革に取り組んできた。その結果、その達成度を評価する「リスボン戦略レビュー2006」では、デンマークは生産性と競争力において、EU25ヶ国中トップとなった。

デンマークに学ぶべきは制度ではなく、この戦略性と合理性だ。
posted by 持続可能な未来プロジェクト at 00:00| 水津陽子リポート

2007年12月10日

イタリアの誇り 偉大なる田舎

1115日〜20日まで新宿のリビングデザインセンターOZONEでスロー展(Slow city/life/food)が開催され、イベントにはイタリアで最も美しい町つくりを行っているメンバーの方々10数名が来日しました。その企画実施を行った日伊交流協会NiXiTAの事務局長の長谷川恵美さんにお話を伺いました。

 
 

● スロー展に参加された目的はなんですか?

 

まず私達の団体「日伊交流協会(NiXiTA)」ですが、ペルージャ外国人大学の日本人スタッフ(イタリア在住)が中心となっているもので、イタリアで経験する元気な中小都市を日本に紹介したいというのがきっかけです。今回中心としてご紹介したのが「イタリアで最も美しい村連盟」BBII Borghi piu belli d’Italia)です。この連盟はイタリア自治体協会の観光政策評議会で、遺産財産の擁護・再評価といった保存活動を目的に創設され、美しい観光資源を生かした町村の活性化を呼びかけています。今回のスロー展では、地域の自然、歴史、文化の特性を生かした元気なBBIの村の展示を行い、シンポジウムにも参加しました。

 
 

● BBII Borghi piu belli d’Italia)とはなんですか?

 

この活動「BBI」は、20013月、イタリア自治体協会の観光政策評議会で、遺産財産の擁護・再評価といった保存活動を目的に創設され、美しい観光資源を生かしたさまざまなフェスティバルや環境会議を通して町村の活性化を呼びかけてます。観光だけをやっていこうというのでなく、地域の人々がそこで元気に生きていくことが第一で、それからツーリズムに反映していくという考えを持っています。

 

 http://www.borghitalia.it/index.php

 
 

現在BBIのメンバー市町村は158で、人口15,000人以下の小さな村を対象にしています。メンバーになるには調査員による審査を受けなければならず、一度審査を通っても、抜き打ちテストで評価に達しなければ、メンバーを外されてしまって、再チャレンジが必要になります。その分信用も高く、申請が殺到しています。

 
 

BBIの参加特典は、厳しい審査による信用はもとより、共同の広告・広報・販促活動に参加できること。これにより観光客が増え、村が活性化し、一度村を出て行った人がまた戻ってきたというところもあるそうです。

 
 
 

● 「偉大なる田舎」とはどのような意味ですか?

 

イタリアの田舎に住んでいる人はときにお門違い?と思うくらい、自分たちの町に自信を持っています。日本の私達からみると何もないじゃないと思えることでも、自分のところにはこんなものがある、あんなものがあると自慢します。逆に日本は田舎であることを卑下するように思えます。田舎には素晴らしいものがあるというメッセージを伝えたくて、今回のネーミングを「偉大なる田舎」にしました。

 
 

今回参加したウンブリア州観光局代表のチミッキ氏に、「日本ではなかなかそのように思えないのだが、どうすればいいのだろうか」という問いをしてみると、「日本の人は日本人でいてください。何をするというのではなく、自分たちが何を持っているのか、何者なのかを知るのが最初じゃないでしょうか」ということでした。

 
 

イタリアの小さな町が元気なのは、最先端の技術を使っているからでなく、町の人たちが意識を持っているからだと思います。町を愛し、町に来る人たちに感謝している。町全体で自分たちの愛する町をどうかしていこうという意識が強いからだと思います。例えばベヴァーニャという職人の町があります。毎年6月にはお祭りがあり中世の紙漉きなど職人工芸を紹介しますが、職人は3年でやることを変えなければならない。それは観光客に新しいものを見せるようにという意味もありますが、新しい分野を勉強し、その町の魅力を一層つくっていくためです。これを職人の人たちが納得してやっている。日本人としてはそこまで頭を柔らかくして考えにくいのですが、町の人たちが自分たちの町を活性化するにはどうしたらいいか、上から押し付けられているのではなく、自分たちで自覚して自分たちでやっていこうというところすごいと思います。

 
 

● 今後の活動について教えてください

 

NiXiTAはまだできたばかりの団体ですが、これからも日本とイタリアのかけはしとなるような活動をしていきたいと思います。今年はBBIの連盟の紹介に終わりましたが、来年はもっとイタリアの良さを伝えられるよう、それぞれの村の活動や取り組み事例の紹介したいと思います。今回イベントで日本の団体「日本で最も美しい村連盟」とコンタクトが得られたので、今後情報交換などの活動をしていきたいと思っています。

 

 http://utsukushii-mura.jp/

 
 

語学を通してイタリアとの交流を深めるほかに、知識や経験を持った人たちがお互いに学びあい発信できる場作りをしていきたいと思っています。

(文・キュベル

posted by 持続可能な未来プロジェクト at 19:05| 風間英美子リポート